文・撮影/尾崎由紀

1日目 石垣島にて

「満月の夜に咲く花」

  

●平久保灯台


●玉取埼展望台


●ソーキそば


●ドラゴンフルーツの花


 次から次と発生していた台風がようやく途切れ、7月21日(日)出発日はこの上ない晴天に恵まれた。石垣島に上陸するなり、これぞ南国という太陽が痛いくらいに照りつけ、空気はトロピカルフルーツの香りがいっぱい。
 さっそくレンタカーの手続きをする。7月に出来たばかりのこの会社を経営するのは美人の女社長さんである。私達の荷物と機材の多さに「撮影のお仕事ですか?」とびっくりされる。ここでごちそうしてくださった自宅の果樹園特製のマンゴージュースとパイナップルは後々までずっと忘れられないくらい、とにかく美味しかった。
 まずはエメラルドグリーンの海と真っ赤なハイビスカスが咲き乱れる玉取崎展望台に向かい記念撮影。実は親友も私に負けず劣らず大の記念写真好きである。今回持参したカメラは3人合わせて計6台。私の記念撮影も最近はデジカメが主流となっている。この旅でもまた恐ろしいほどの枚数撮ることが予想される。
 さて、昼食に石垣一(世界一!?)おいしいと噂の明石食堂のソーキそばをいただく。道路沿いにたった1軒たたずむ何気ないその食堂は、ちょうど昼時で満席。地元の人もわざわざ訪れるその味は2日間かけてとろとろに煮込むという豚の三枚肉、コクがあるのにあっさりしたスープ、そしてほど良い細さとのど越しの麺。これまた後々までずっと忘れられない味となった。
 そこからさらに北へ、平久保崎をめざす。出発の5日前、八重山通の大先輩が撮影された風景写真を見せていただきその眺望にひと目ぼれ、とても来たかった場所だ。
 坂を登ると突然視界が開け、果てしなく広がる真っ青な海をバックに美しい灯台がそびえ立つ絶景。今日の澄みきった空が、さらに奥深い海の色を創り出してくれる。その場にいた地元のかたが、ここは石垣で一番景色の良いところだと教えてくださった。
 灯台好きの私にとって白亜の灯台は神聖な建物、特別な思い入れがある。「平久保灯台 石垣島最北端」と書かれた文字を前に思う。「私、やっと、ここに来たよ…。」
 沖に浮かぶ岩島、大地離(だいちばなり)にはベニアジサシ、エリグロアジサシが群れている。ここでのベニアジサシを始め、この日は武那田原でツルクイナを、磯辺でズグロミゾゴイを、次々にライファー・ゲットし、夕方無事宿に到着、車を止めてふと見ると目の前にオオクイナが歩いている!なんとヒナも!!こうして初日は調子良くスタートをきった。
 まだ明るいうちに宿で夕食を済ませてから、バンナ岳へナイトウォッチングに出かけ、再び宿にもどり、シャワーを浴びていると宿のご主人が「いまドラゴンフルーツの花が咲いていますが見ますか?」と裏へ案内してくださった。
 そこには初めて見る大輪の白い花が神秘的な輝きを放ち咲いていた。奥様がドラゴンフルーツの試食もさせてくださった。赤い実にナイフを入れると果肉は白く、黒い細かな種が一面にちらばっている。さくさくとして、なんとも不思議な食感。キウイに似ているようだが、甘ったるくはなくさわやかな味わい。ぱくぱくと3人で1個をあっと言う間にたいらげた。
 月下美人の花に良く似たドラゴンフルーツの花は満月に近い夜に咲くと言われ、数時間花開き翌朝にはしぼんでしまうという。一夜限りの美しくもはかないその姿は危険な恋の匂いを漂わせるかのようだ。今夜来て良かった。
 今夜会えて良かった。
 やさしい月の光に包まれて私はいつの間にか眠りについた。



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